TOYOTA CROWN



品格、ゆとり、静粛など、高級車の全てを凝縮した国産セダンの代表格、トヨタ・クラウン。
昭和30年(1955)に初代クラウンがデビューして以来、数えて10代目にあたるこのタイプは、
平成7年から11年(1995〜99)まで製造された150系と言われるモデルである。

この世代最大の特徴は、9代目まで守り続けてきたペリメターフレームを捨て、フルモノコックボディを採用したことで、
大幅なボディ剛性の強化を図るとともに、先代と比較して100kg以上もの軽量化に成功したところにある。
やたら丸っこいだけで面白味のない似たり寄ったりのセダンが国産車市場を横行する中で、曲線の優美さを残しつつも
力強い直線的デザインを取り入れたキレのあるスタイリングは、歴代クラウンの中でも最も完成された姿であると評される。



フロントビューの重厚さは、長年培ってきたクラウン・ロイヤルシリーズの基本モチーフともいえる
大型で厚みのあるフロントグリルが、「質実剛健」という趣きの伝統美に昇華されていることによる。
変な小細工をしないストレートな角型ヘッドライトも、安定感を保つのに一役買っているのだろう。
「日本の乗用車」たる基本が、ここに具現化されていると言っても過言ではない。

リアビューの魅力は、クラウン伝統の横長テールランプに尽きる。
最近のクラウンは安物セダン的な台形テールで、正直、好きになれないのだが、トヨタは
9代目クラウンのナンバープレートをバンパー下部に移したデザインが、「クラウンに相応しくない」と
歴代オーナーから総スカンを食らい、あわててマイナーチェンジした過去を忘れたのだろうか。
それに比べこの世代のテールは、伸びやかな横ストライプのデザインを継承し、光の性質で安っぽくみえる
LEDランプではなく、エレガントな光を放つリフレクタ使用のバルブ式としているところに、優美さが感じられる。
(実は購入直後のマイナーチェンジで、LED式テールに変更された。・・・先に買っといてよかった!)

このボディで一番お気に入りのポイントは、トランクリッド両端のウェッジである。
冒頭にも書いたとおり、曲面の優雅さとウェッジの利いた直線の融合がこのクラウンの魅力であるが、
その中でも最も力強いラインを描くのが、トランク上面からリアフェンダーへ向かう角の部分である。
普通なら雨水対策のため撫で肩になるところを、トランク両端が少し上向きに反り上がり、
鋭角の稜線を経て、ストンと真下に落ち込んでいくデザインとなっている。
絶妙なバランスで仕上げられた反り上がり角度が、「歴代最高」との誉も高い出来栄えと言えよう。

さて、クラウンの魅力は、ボディデザインだけではない。
ロイヤルシリーズの中でも、最も「運転する楽しさ」つまり「走り」にこだわって作られたのが、
スポーティなクラウンと賞される、「ロイヤル・ツーリング」というグレードである。
搭載されるのは、220psを発揮する水冷直列6気筒3000ccDOHC/VVT-i の、専用2JZ-GEエンジン。
このVVT-i(Variable Valve Timing-intelligent)とは、連続可変バルブタイミング機構をいい、アクセル開度を検知して
加速等の高負荷時にはバルブを全開、クルージング中の低負荷時にはバルブを閉じ気味にするなど
吸気バルブをコントロールすることにより、高性能と低燃費を高次元で両立させることができる機能で、
大排気量の胸のすくような加速感を損なうことなく、連続走行では10km/Lを超す燃費を実現している。
(※オートクルーズ利用での実測値。ただし「気持ちよい」加速を楽しんでいると、あっというまに5.5km/Lまで落ち込むことに・・・。)

ロイヤル・ツーリングでは他のロイヤル・サルーンより、走りに徹した装備が付加されている。
その一つが、215/60Rのワイドタイヤを履いた15インチホイールである。(ロイヤル・サルーンは205/65R15)
サスペンションは、元々の4輪ダブルウィッシュボーン式をロイヤル・ツーリング専用にチューンナップした
ロイヤル・ファームチューンドサスペンションに変更しており、クラウンにしては腰のある粘りをみせる。

3000ロイヤル・ツーリングでは、クラウン・シリーズ初となる5速ATを採用した。
普通の4速ATでいうローとセカンドの間にもう1速入っているようなギア比となっており、
変速時のショックが少ない、なめらかでロスの少ない加速を実現した。
なおこれにともない、シフト表示はロー(L)の次はセカンド(2)ではなく、スロープ(S)へと変更されている。
インパネは、デジタルメーターではなく、スポーティな速度計+回転計の2眼アナログメーターを採用、
その他、本革巻きステアリング、木目調パネルなど、クラウンならではのゴージャスさも健在である。


クラウンがその本領を発揮するのは、
高速ロングクルージングであろう。
レッドゾーンの半分にも満たない回転数で
100km/hの高速巡航が可能なのは、
地力に勝る3000ccクラスの強みである。

一度オート・クルーズをセットしてしまえば、
常にアクセルを踏み続けなければという
義務からさえ解放されてしまうのも快適。

運転する側にも、乗る側にも、
クラウンは「楽うん」である。


伝統のエンブレム。 王冠マークがグリル中央にドンと据えられている。
かつて「いつかは、クラウン」というキャッチコピーが一世風靡したが、
クラウンには、「たしかにクラウンに乗った(=クラウンを買った)」という裏切りのない感銘がある。


ボディカラーのラインナップは、スーパーホワイトII
スーパーホワイトパールマイカシルバーメタリック
ダークグレーメタリックシルキーシャイントーニング
ダークブルーマイカライトターコイズマイカメタリック
ブラックダークフォレストトーニングの9色。
このうち、スーパーホワイトパールマイカシルキー
シャイントーニング
ダークフォレストトーニングは、
メーカーオプションとなる。
(シルキーシャイントーニングとダークフォレストトーニングのみ、ツートーン)

我が家のクラウンは、ダークフォレスト・トーニングで、
車検証では「緑」と分類されているが、実際のカラーは
ブルーに限りなく近いグリーンであり、まさに「深い森
というべき色となっている。




トヨタ クラウン ロイヤルツーリング3000

型  式 JZS155-ATAXF
フレーム形式 モノコック
全長×全幅×全高 4820×1760×1425mm
室内長×室内幅×室内高 1990×1485×1165mm
本体価格 367.4万円
販売開始年月 1995年8月
ホイールベース 2780mm
トレッド前 1485mm
トレッド後 1495mm
最低地上高 150mm
車両重量 1470kg
車両総重量 1745kg

スペック
 エンジン
エンジン型式 2JZ-GE
種類 水冷直列6気筒DOHC24バルブ
内径X行程 86.0mm×86.0mm
総排気量 2997cc
圧縮比 10.5
燃料供給装置 EFI
最高出力 220ps(162kW)/5600rpm
最大トルク 30.0kg・m/4000rpm
過給機 NA/VVT-i
燃料タンク容量 73L
使用燃料 無鉛プレミアムガソリン
燃費(10/15モード) 9.8km/L

 ステアリング&サスペンション
ステアリング形式 パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション前 ダブルウイッシュボーン式コイル
サスペンション後 ダブルウイッシュボーン式コイル
ブレーキ前 ベンチレーテッドディスク
ブレーキ後 ディスク
最小回転半径 5.5m
 シート
乗員定員 5名

 トランスミッション
型式 5AT<5ECT-iE>
駆動方式 FR
LSD なし

 変速比
第1速 2.804
第2速 1.978
第3速 1.531
第4速 1.000
第5速 0.705
後退 2.393

 減速比
第1速 3.909
 タイヤ&ホイール
タイヤ 215/60R15
ホイール 切削光沢アルミ
販売店パンフレット記載と同様のスペック表である。
自動車好きを自認する向きには、「クラウンは車として魅力がない」という
意見の方がゴマンといるが、それは見る人の視点が違うことにほかならない
ということに気がついていないだけのことである。
スペック表というのはあくまでも「代理指標」であって、その車の全てではない。
クラウンとて、数値だけ見れば、出力と重量のバランスがとれていないとか
如何ようにも言うことはできるが、数値には表せない風格や満足感というものは
実際にオーナーとして乗った者でなければ、感じることのできない喜びなのである。
単なる性能だけではない、別格の「ステイタス」を与えてくれるもの・・・
それがクラウン=王冠と呼ばれる所以なのだ。


旅の空の下でも、我が家にいるようなくつろぎを。

ゆったりとした漫遊の旅を楽しもうじゃありませんか。


05.11.01.up


追記 わが家のクラウンは、2019.03に引退となりました。21年間という長い時間、
エンジン・足回りともに一度たりとも不調を起こさず最後までパワフルかつエレガントに
走ってくれました。ずっと車人生の半分以上もの期間を共に過ごせたことを誇りに思います。
ありがとう、クラウン。