あなたは、「ライフル射撃」というスポーツがあるのをご存知でしたか?
はっきり言って、多くの一般人の方々は全く聞いたことがないか、別の種目を想像していることと思います。
ここでは、そんな初心者のためにごく簡単に「ライフル射撃」というものについて説明しましょう。
初めて「ライフル銃」と聞いて、正確にその物を思い浮かべられる人は少ないと思います。
多くの人は「人が持って撃つ長めの銃」だとはわかるのですが、「飛んでるお皿を撃つやつですね」とか、「アクション映画とかでダダダッと連射しているやつですね」とか、考えてしまうようです。
しかし、それは両方とも間違いです。
「ライフル射撃」というスポーツで使用する「ライフル銃」というのは、一発につき一個の弾を発射するものであって、単発で連射はできません。
ちなみに、「飛んでるお皿を撃つやつ」は、「散弾銃」という一発につき数個〜数十個の丸い鉛粒を拡散させるように発射する銃で、その競技を「クレー射撃」と言い、「ダダダッと連射しているやつ」は、ライフル弾を機械的に連続発射できるようにした「機関銃」という戦闘用の銃です。
「ライフル銃」は、流線型の鉛弾を発射する際に、銃身内に刻んだらせん状の線条(=rifling)によって弾自体を回転させることにより、空気抵抗を低減させて弾の直進性能を高めており、遠距離での命中精度を向上させた銃です。
よって、動く標的を捉えるために弾が拡散する(逆に空気抵抗で近距離しか飛ばない)散弾銃や、携帯性を追求して銃身を短くした(命中精度はかなり落ちる)拳銃などとは異なり、射程距離、命中精度の点でたいへん優れています。
なお、発射の際には弾を押出すのに火薬を燃焼させてその圧力を利用していますが、火薬を使わずにポンプ内に貯めた空気圧を利用して発射する「空気銃(=エアライフル)」もライフルの仲間です。
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スモールボア・フリーライフル(SFR) =口径5.6mmの装薬銃 |
エアライフル(AR) =口径4.5mmの空気銃 |
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スモールボア・ フリーライフルの弾 (22ロングライフル) |
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エアライフルの弾 (4.5mm鉛弾) |
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所持許可証 |
ただし、エアライフルは18歳以上でないと取得できませんし、装薬のライフル銃は20歳以上で、かつ散弾銃を10年以上所持しているか協会からの推薦がなければ申請できませんので、注意してください。(エアライフルは協会推薦があれば15歳から所持できます)
目的は至って単純。決められた数の弾で、合計で高い得点を取った者が勝ち。
もちろん、ただ的に当るだけじゃダメ。的の中心に近いほど点が高く、真ん中なら10点です。
めざせ、満射(全弾10点の満点)!
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⇒ 中心部のアップ ⇒ |
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上の黒い円のようなものが「標的」です。
(競技によって標的も種類がありますが、ここでは、10m用のAR標的を例にあげて説明します)
標的は、10点の白点を中心に、順に9点圏、8点圏、7点圏・・・と、等間隔の同心円で構成されています。
弾の当ったところが得点になりますが、当った弾の中心ではなく、丸い弾痕の一番内側が削りとっている場所、つまり最も高い得点の部分で採点します。
この標的では、センターの白点にカスりさえすれば、見事10点ということになります。
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よしっ! 文句なし。 センター10点!! |
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おっとっと、ちょこっとだけど白点にカスってる。 これでも ギリギリセーフで 10点!! |
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キャーッ! 飛ばしちゃった・・・。 痛恨の8点。 |
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あー・・・。わずか数ミクロンだけどカスってない。 残念ながら、9点。 |
エアライフルの場合、10発単位を1シリーズとして、6シリーズ・計60発600点満点で争います。
もっとも、10点の白点は直径0.5mmしかありませんし、黒円の一番外側(4点圏)部分でも30.5mmですから、10mも離れた所から撃つとそう簡単には当ってくれません。
全日本クラスで入賞しようと思ったら、少なくとも580点台を出さないとなりませんから、1発の飛ばし(はずし)が致命的になってしまいます。
なお、標的までの距離ですが、エアライフルでは10m、スモールボアライフルでは50mと決まっています。
スモールボアライフルの50m用標的はさすがに少し大きくなっていますが、10点は1cm、黒円で11.2cmですから、見た目の大きさはエアライフルの標的よりもさらに小さい点にしか見えません。
前にもちょっと触れましたが、銃の種類や、射撃姿勢などで、数種類の競技があります。
まず銃の種類から「エアライフル(AR)=空気銃」「スモールボアライフル(SB)=小口径ライフル」「ビッグボアライフル(BB)=大口径ライフル」に大別されますが、競技としてはARとSBが主流です。
(この他にピストル競技の「エアピストル(AP)」「センターファイアピストル(CP)」などがありますが、ここでは割愛します)
SBはさらに、使用できるパーツの限定される「スタンダード(SSR)」と、選択肢の広い「フリー(SFR)」に分けられます。
そして各銃種について、射撃姿勢により「立射(Standing=S)」「伏射(Plone=P)」及び、この2つに膝射(Kneeling=K)を加えた混合競技の「三姿勢(3Position=3P)」があります。
![]() 立射姿勢(S) |
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伏射姿勢(P) | 膝射姿勢(K) |
各種目は、銃種・姿勢をアルファベットの頭文字を組合わせ、発射弾数を表示した略称で呼ばれます。
射撃競技は本来、男女混合が基本でしたが、近年では男女の競技分け見直しを行い、それぞれ「M(=Men)」「W(=Women)」の文字を競技種別の後につけて競技名とすることになっています。
また、少年(高校生以下)専用競技は「J=(Junior)」をつけて表します。
さらに国際大会での呼称変更を受けて、AR種目では「AR」の代りに「10m」、SB種目では「SB」の代りに「50m」という呼び方もするようになりました。
例えば、「SFRP60Mまたは50mP60M」と言えば「男性スモールボア・フリーライフル伏射60発競技」、「ARS40JWまたは10mS40JW」と言えば「少年女性エアライフル立射40発競技」を、また「SFR3P120MWまたは50m3P120MW」と言えば「男女混合スモールボア・フリーライフル三姿勢120発競技」のことを意味するという具合です。
このように数ある種目ですが、その中で花形とも言うべき種目は、「ARS60」「SFR3P120」「SFRP60」などがあります。
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